Monkey Guitar Instruments Lab.

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Metal Head Monkey Distortion

3月から実験を開始し3ヶ月、やっと承認いただけるメタル系ディストーションペダルが 完成しました。MetalZone譲りのズンズンサウンドと激烈ディストーションサウンドを 両立したメタル系の方のためのディストーションペダルです。

今回は、今までとは趣向を変え、オペアンプ二つで構成しています。これは、 MetalZoneの回路に習って検討した回路構成上どうしても4段のオペアンプ回路が 必要になったからです。入力側から中域の増幅段-ダイオード歪み生成部-低高音増幅- TONE回路と構成となっています。MetalZoneでは、オペアンプ8段構成となっており、 その分音の劣化が激しく、またギターの音色をほとんど残さないので、どんなギターを 持ってきてもエフェクターのその音!になってしまっていました。

今回は、ベース回路から不要な部分及び削除できる部分を思い切って削り オペアンプを半分にしました。

また、今回はケースを変えてみました。少し大きめですが、今回の回路が大きく 基板もいつもより一回り大き目のものを使用しましたので、非常に作りやすかったです。 このケースは、ギター親父さんのホームページから注文できます。

http://homepage.mac.com/sorazou/

激烈サンプルサウンドUPします。つい熱中して弾きまくってしまうので、 いまいちですが、聴いてやってください!!フロントピックアップにすれば、 ゴリゴリブルースに使えるかも?!アンプはJCM900コンボを使用。

回路図はこちら
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実験レポート
MetalZoneとFMDの音を解析

しばらくサボっていましたが、音の解析のレポートを久しぶりに書きます。 BOSSのMetalZoneとMGILのFAT!!MonkeyDistortion(以下FMD)の二つです。

MetalZone(以下MZ)の特徴として、重低音のズンズンサウンドがあります。一方、 MGILにあるFenderアンプSVD-20もセレクトスイッチがあり、STACKアンプをシミュレートした サウンドが得られます。このアンプを使用すると、FMDでも重低音が得られましたので、 これと比較してみます。

metalzone

まず、MZの方の波形を見てみます。解析している音は、Eのローコード一発時、 ズゥンズゥンのゥのところの音です。ローコードでバッキングするとき、 右手の手のひらでミュートしますよね。そのミュート音です。ギターのチューニングが 全音下げということですので、Dのローコード(294Hz)です。しかし、実際の波形では、 100Hz(5弦開放Aの2オクターブ下)と150Hz(6弦開放Eの下のDのさらに1オクターブ下) に信号のピークがあります。すなわち、ミュートすることでオクターブ下の 音が発声していることになります。もう一つ、信号波形を見ますと割と綺麗な正弦波に なっています。すなわち、倍音成分がほとんど含まれておらず、このことから低音成分しか ないということが分かりますので、重低音になっていると考えられます。

MetalZoneでは、100Hz付近をわざと持ち上げていますので、この影響により、 低音が強調される仕組みとなっているのではないでしょうか?

fmd_flyingv

続いてFMDです。FMDでは、5弦開放Aの半音下げチューニングでローコード一発の ミュート音です。こちらも100Hzと200Hzに信号のピークがあることから、 重低音が得られていると思います。しかしこちらの重低音はアンプの設定で得られて いるものだと思います。

すなわち、MZもFenderのアンプも100Hz付近の強調、というのが味噌ではないか? と考えられるわけです。Metal系のエフェクターを作る場合は、100Hzでの強調が 必要だと思います。

サンプル音源をUPしときます。MZの方は、カスタムのフライングVに5150、 MZです。ミュート音のサンプリングは中間のズンズンです。FMDは、Epiphoneの フライングVにFMD、SVD-20のSTACK設定です。サンプリングは、一番最後のAコードです。

MZ_5150(ThanksforMasaRi様)はこちら
FMD_flyingvはこちら

MetalZoneの回路を解析する

Web上に実験を行っているMetalZoneの回路がフリーでおいてあるのを見つけましたので、 回路図を見て、MZがどんな音の加工をしているか調べて見ます。(下のリンク)


回路図はこちらから

基本構成は、以下の様になります。1)ソースフォロワのバッファでインピーダンス変換、 2)一発目の増幅は擬似インダクタンス回路を用いた中域強調とパッシブのローパスフィルタ、 3)ダイオードクランプ用の増幅回路とダイオードクランプ、4)高域と低域強調の 擬似インダクタンス増幅回路、5)トーン回路、6)出力段のバッファとなっています。

入力は、ギターのインピーダンスが高いため、インピーダンスを低く変換する ソースフォロワのバッファとなっています。電圧ゲインは1ですので増幅は行われません。 JFETはゲート入力となっていますので、入力インピーダンスがほぼ無限大と考えて問題なく、 高いインピーダンスで受けられます。

2段目は、中域強調の擬似インダクタンス回路を用いた増幅回路+ローパスフィルタ回路 となっています。ローパスフィルタで低音部分も強調されていることとなります。 擬似インダクタンス回路はトランジスタで構成させており、一般的にはサレンキー型と 呼ばれるフィルターと同一の構成です。コンデンサとこの回路でLC擬似的な共振回路 (共振周波数でインピーダンスが0になる、実際にはならないが)となっており、回路図に 示してある周波数にてインピーダンスが低くなる設計になっていると思います。 この回路のインピーダンスと、出力側のインピーダンスで抵抗分割されているので、 インピーダンスの低い周波数では、ゲインがあがることになります。よって、その周波数が 強調されるわけです。

3段目の増幅は、10uFを使用した増幅回路です。ほぼ全周波数領域で増幅しています。 ゲインは、1kと200kの可変抵抗で決定されます。ダイオードには、1N4148を使用している 用です。

4段目はMZのおそらく特徴の一つだと思いますが、低域と高域が強調されるフィルタ回路です。 サレンキー型の擬似インダクタ回路を用いて、特定の周波数だけインピーダンスが下がる 構成となっています。抵抗とコンデンサで構成したフィルタ回路よりも周波数選択幅が 狭く、周波数選択が容易となっているようです。回路図上では、5kHzと100Hzのようです。

5段目は、同じく擬似インダクタンス回路を用いたトーンコントロール回路+MID追加 となっています。グラフィックイコライザーと言ってもよいかもしれません。

最後は、出力のインピーダンスを下げるためのエミッタフォロワ回路です。 トランジスタを使用しているので、エミッタとなっています。FETの場合は、 ソースとなります。入力信号に出力が追従するため、フォロワーと呼ばれます。

以上のようにさまざまな波形の変形を施し、ズンズンサウンドができているようです。 しかし、逆に音は多段オペアンプを通過しなければならないので、音が細くなっていって しまいます。音が細くなっていくのと、オペアンプの増幅によって音を強調していくのの おっかけっこになっているような印象を受けました。MGILにて、これの音抜け改善版を 考えていく時、オペアンプ2個だけでの構成は不可能では?と頭を抱えております。


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